コラム執筆のお知らせ フランチャイズビジネスの基礎知識
今回は、コラム執筆のお知らせです。
社労士向けの会報誌を発行している中小企業福祉事業団様からのご依頼で、その会報誌に寄稿しました。中小企業診断士の取組みを紹介するコーナーとのことで、フランチャイズビジネスに関する基礎知識を紹介しております。顧問先からフランチャイズ展開をしたい、新規事業でフランチャイズに加盟したい等の相談があることを想定して執筆しました。

会員限定の会報誌ですが、掲載実績としてテキストやPDFの掲載許可は下りてますので皆様にもご紹介します。
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皆様の支援先からフランチャイズ展開を検討したい、あるいは他業種だが新規事業としてフランチャイズ加盟を検討している、といった相談を受けたことはありませんか?フランチャイズビジネスにはメリット・デメリットがあり、正しく使わないと支援先に大きな影響を与えてしまう可能性があります。今回はフランチャイズ展開について基本知識を紹介します。
1.フランチャイズの定義と仕組み
フランチャイズとは、本部企業(フランチャイザー)が自社のブランドやビジネスモデルを基にした事業運営権を、他の個人や企業(フランチャイジー)に提供する仕組みです。本部はブランド力や運営ノウハウ、研修プログラム、広告支援などフランチャイズ・パッケージを提供します。一方、加盟店はこれらを活用して事業を運営し、一定の加盟金やロイヤルティなどの対価を本部に支払います。この仕組みにより、本部は地域密着型の店舗拡大が可能となり、加盟店は独自で事業を立ち上げる場合よりも低リスクで経営をスタートできるのが特徴です。
2.フランチャイズビジネスの市場規模
日本国内のフランチャイズビジネスの市場規模に関しては、(一社)日本フランチャイズチェーン協会による「フランチャイズチェーン統計調査」を参考にするとよいです。執筆時点での最新調査結果は2023年度になるが、加盟店・直営店の合計売上高が約28兆円となっています。小売業の占める割合が大きく、特にコンビニエンスストアの売上が4割以上を占めていること、コロナによる減少はあったものの、右肩上がりで市場規模は伸びていること(参考:2013年度合計売上高は約23兆円)、は知っておくとよいでしょう。
3.加盟店のメリットとデメリット
本部が運営ノウハウや研修を提供するため、事業経験がなくても経営を始められる点が大きなメリットです。また、独自に事業を立ち上げる場合と比べてリスクが低減します。本部が築いたブランドを活用できるため、開業当初から集客力を期待でき、顧客の信頼を得やすいのも魅力です。さらに、仕入れやマーケティングといった業務を本部が担うことで、加盟店は自店の販売活動や顧客対応に専念することができます。加えて、本部による共同購買などを通じて仕入れコストが抑えられるため、価格面での競争力も高まります。
一方で、加盟店の業績は本部の方針やブランド力に左右されやすく、特に本部が不祥事を起こした場合など、加盟店側もその影響を受ける可能性があります。また、本部の基準やマニュアルに従う必要があるため、店舗の独自性を出しにくい点も課題です。さらに、加盟金やロイヤルティの支払いが必要となるため、資金計画をしっかり立てなければ経営を圧迫することがあります。本部への依存度が高まることで、自主的に経営改善に取り組む機会が減少し、結果として経営者としての成長が制限されるリスクもあります。加えて、契約終了後に競業禁止義務が課される場合があるため、将来的な選択肢が制約される可能性があることにも注意が必要です。
4.本部のメリットとデメリット
本部にとっては、加盟店が資金や人材を提供することで、直営店舗を開設する場合よりも負担を軽減しながら、多店舗展開を効率的に進めることが可能です。特に中小企業にとっては、フランチャイズは資金調達の一つの手段と言ってよいでしょう。また、地域に密着した加盟店が新たな市場に参入することで、本部は効率的にエリアを拡大し、競争の激しい市場でも成長を加速させることができます。
さらに、加盟店から支払われる加盟金やロイヤルティ収入は、本部にとって安定した収益源となり、経営基盤を強固にします。加えて、加盟店オーナーは自店舗の利益が自身の収益に直結するため、直営店舗の従業員以上に販売意欲が高まります。この高いモチベーションが店舗ごとの販売効率を高め、本部全体の収益向上に大きく寄与します。
一方で、本部が営業政策やシステムを変更する際には、加盟店で混乱や不満が生じるケースもあるため、事前の十分な説明や手厚いサポートが不可欠です。また、市場環境の変化や消費者ニーズの多様化に対応するため、本部は魅力的なメニューやサービスを継続的に開発し続ける必要があります。さらに、加盟店の中には規定を守らなかったり、顧客対応に問題があるケースも存在します。こうした問題行動はブランド全体の評判を損なう恐れがあるため、本部としては定期的な指導や監査を通じてリスク管理に努める必要があります。加えて、不振店に対しては、本部が積極的に支援や改善策を講じる必要がありますが、対応が不十分であればロイヤルティ収入の減少やブランド価値の低下といった悪循環を引き起こす可能性があります。本部の対応が不振店の改善や撤退の適切な判断を左右するため、戦略的かつ慎重な取り組みが必要です。
今回は、フランチャイズのメリットとデメリットについて説明しました。支援先からフランチャイズ展開をしたいと相談があったときの対応は、フランチャイズ研究会が執筆をした「フランチャイズ本部構築ガイドブック」(同友館)をお読みいただければ幸いです。