【支援事例】多店舗展開に向けた優先順位について

今回紹介する事例は、飲食店の多店舗展開についてです。1店舗で経営者を中心に運営をしていく生業型のスタイルもありますが、2店舗目を出店するとなるとやり方ががらりと変わっていきます。そのために必要な準備をしましょうという支援になりました。
1.はじめに:多店舗展開に向けた相談
今回支援したのは、飲食店を経営する社長からの相談です。社長は、現在の店舗を安定させながら、2店舗目を出店したいと考えていました。しかし、現状の売上や利益で出店すべきか悩んでいました。ヒアリングをしたり決算書や月次の損益計算書を見ると、個店の利益は十分な数字であるものの、あくまで社長が毎日お店に入ってる生業型だからであり、このまま2店舗目を出店するのは難しいだろうなと考えました。
多店舗展開を実現するためには、新しい店舗を開くだけでなく、現店舗の経営を持続可能な形に整えることが不可欠です。現在の店舗運営が社長一人に依存している状況では、仮に2店舗目をオープンしても管理が追いつかず、事業全体の負担が増すだけになってしまいます。そこで、今回の支援では、「売上の安定」「人材の確保」「営業体制の拡大」という3つの視点からロードマップを策定し、段階的に経営の基盤を強化する方針を取ることになりました。
具体的には、①値上げによる利益確保、②人材採用による業務負担の分散、③営業日・営業時間の拡大という3つのステップを設定し、社長が無理なく事業を拡大できる体制を作ることを目指しました。このロードマップに沿って施策を実施することで、短期的には社長の負担を軽減しつつ、中長期的には2店舗目の出店が可能な状態を作ることができます。
次の章では、現在の店舗が抱える課題について詳しく整理し、どのようなステップで解決を進めたのかを解説していきます。
2. 課題の整理
社長は2店舗目の出店を検討していましたが、現状の経営体制では新規出店に踏み切るには課題が多い状況でした。ヒアリングを通じて現場の運営状況を確認したところ、売上や利益は十分に確保できているものの、社長自身が長時間お店に立ち、現場を回すことで成り立っている生業型の経営であることが明らかになりました。このままの状態で新店舗を開業すると、業務の負担が増大し、事業全体の安定性が損なわれる可能性があると考えました。
また、具体的な課題として、以下の3点が挙げられました。
① 値上げの必要性
現在の店舗は、適正な売上を確保できているものの、今後の出店のための雇用や2店舗目の経営が安定するまでの利益を稼ぐ必要があることを考慮すると、利益率を改善するための価格改定が必要と判断しました。値上げによって売上が大幅に落ちることを懸念していましたが、慎重に価格設定を行い、提供価値を伝えることで、客数を維持しながら利益を確保できる可能性があると考えました。
② 人材採用
社長は経理業務や販促物の作成、仕込み、接客までをすべて担っており、長時間労働が常態化していました。そのため、営業日数の拡大や営業時間の延長が難しく、多店舗展開どころか、現在の店舗の運営を維持するだけでも負担が大きい状況でした。今後、新たな店舗を開くためには、社長の業務を分散させることが不可欠です。特に人材の確保と育成を進め、オーナー不在でも安定して営業できる体制を構築する必要がありました。
③ 営業日・営業時間の拡大
現在の店舗は、社長の負担軽減のために定休日を設定するなど、営業日数を調整している状況でした。しかし、多店舗展開を見据えると、営業日や営業時間を拡大し、より多くの顧客に対応できる体制を作ることが望ましいです。特に、最近は客数が増加している傾向にあり、閉店時間を延長することも検討すべきでした。しかし、これを実現するには、やはり人材の確保が最優先となります。
これらの課題を解決するために、「値上げ」「人材採用」「営業体制の拡大」の3ステップをロードマップとして策定し、段階的に施策を実行していく方針を立てました。
3. 課題解決に向けたロードマップの策定と実施
前章で整理した課題を解決し、最終的に多店舗展開を実現するために、「値上げ」「人材採用」「営業体制の拡大」の3つのステップからなるロードマップを策定しました。コンサル前の月次のPLや出数をもとに、各段階実施後の予想PLを作成して、売上や利益のイメージも共有しました。このロードマップに沿って施策を実施することで、短期的には社長の負担を軽減しつつ、中長期的には2店舗目の出店が可能な状態を作ることを目指しました。
① 値上げによる利益確保
まず最初に取り組んだのは、適正な価格設定による利益率の向上です。社長は当初、値上げによる客離れを懸念していました。また、自社の商品をもっと気軽に利用してほしいという思いもあり、これまでもほとんど値上げをしていませんでした。しかし、提供している商品の価値を正しく伝えることができれば、適正価格での販売は十分に可能です。そこで、価格変更の際には、単なる値上げではなく、「品質の維持・向上のための価格改定」という形で顧客に伝えることを提案しました。
値上げ後の影響を確認したところ、客数の大幅な減少はなく、売上・利益率ともに向上しました。これにより、人材採用や営業体制の拡大に向けた原資を確保することができ、多店舗展開に向けた準備が進められる状態になりました。
② 人材採用による業務負担の分散
値上げによって確保した利益を活用し、社長の業務負担を軽減するための人材採用に取り組むこととしました。特に、社長が店にいなくても運営できる体制を整えることを最優先の目的とし、採用ターゲットを明確に設定して、それに合った採用方法を検討しました。一度の必要な人員を採用するのではなく、教育と戦力化に時間がかかることを踏まえて、雇用や教育を進めました。また、経理業務や販促物の制作など、現場以外の業務も外部委託できる部分は外注化し、社長の負担を軽減することも並行して進めることとしました。特に、税理士への経理業務の依頼や、デザイン制作を業務委託に切り替えることで、社長が本来注力すべき業務に時間を割けるようになりました。
③ 営業日・営業時間の拡大
人材の確保が進んだ後は、営業日や営業時間の拡大に取り組むことで、売上のさらなる向上と店舗の安定運営を目指すこととしました。定休日の設定は、あくまで社長の負担を考えてのもので、お客様からはお店を営業してほしいという声もありました。なので、お店をオープンすればある程度の売上を確保できることは予想できており、実際に想定通りに売上となりました。また、閉店時間に関しても同様で、夜の時間を任せられるスタッフを雇用することで、売上をアップすることができました。このように営業時間を拡大することで、単純に売上を増やすだけでなく、「いつでも営業している店舗」というブランド価値を高め、顧客の定着につなげることもできつつあります。
1店舗目のオペレーションから社長が抜けてもある程度の運営の目途が立ったため、今後は2店舗目の準備に向かっていきます。2店舗目は1店舗目とは違った、さらに社長の理想に近い店舗を出店したいということで、詳細を検討しているところになります。将来的にはのれん分け(独立支援制度)による店舗展開も検討したいとのことで、それをふまえたコンセプトを検討しております。
今回は飲食店の多店舗展開に向けた優先順位の事例を紹介しました。社長も、自分1人では思いつくままに動いて失敗していたかもしれない、専門家に整理をしてもらうことで段階を踏んで準備を進めることができた、と言っていただきました。もしこのような計画作成に不安がある場合は、弊社でもご相談にのりますので、お問合せください。初回オンライン相談30分は無料となっております。
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