最近の講師登壇実績
9月と10月、セミナー講師としての登壇が続いた2カ月でした。
日本フランチャイズチェーン協会主催のSV学校をはじめ、商工会議所の創業塾、補助金セミナー、飲食業セミナーなど、テーマも対象者も異なる複数のセミナーで講師を務めました。10月も引き続き、早稲田大学校友会支援講座や商工会議所でのセミナー登壇が控えています。振り返れば、それぞれのセミナーで受講者の反応や質問内容が全く違っていて、毎回新しい学びがありました。特に印象に残っているのは、日本フランチャイズチェーン協会のSV学校で実施した「商圏分析」のセッションです。受講者40名からいただいたアンケート結果を見て、改めて現場の方々が何を求めているのかを実感しました。
この記事では、最近の講師登壇実績の中でも、特に力を入れている飲食業セミナーの取り組みと、SV学校での商圏分析セミナーの具体的な内容や参加者の声をご紹介します。
1.飲食業セミナーへの柔軟な対応と多様なテーマ展開
飲食業界は、今まさに大きな転換期を迎えています。コロナ禍を経て消費者の行動が変化し、人材不足やコスト高騰といった課題が山積する中で、経営者は日々試行錯誤を重ねています。
私が飲食業セミナーで最も意識しているのは、「誰に向けて話すのか」という点です。飲食業経営者といっても、創業して間もない方と10年以上経験を積んだベテランでは、抱えている課題も必要な情報も全く異なります。さらに、これから飲食業での創業を希望している方や、飲食ビジネスを学びたい学生向けのセミナーでは、そもそも前提知識のレベルが違うわけです。
だからこそ、セミナーの準備段階で主催者や参加者の属性をしっかりヒアリングして、内容を柔軟にカスタマイズしています。例えば、創業希望者向けのセミナーでは、資金繰りの基本や初期投資をどう抑えるか、収益モデルの組み立て方といった実践的なテーマを中心に構成します。一方、既に経営している方向けのセミナーでは、収益改善の具体策やフランチャイズ展開の可能性、人材戦略やDX対応など、より踏み込んだテーマを扱います。
最近の飲食業セミナーでは、特に以下のようなトピックを事例を交えながら解説しています。
最近の飲食業トレンドとコンセプト作りでは、Z世代やミレニアル世代の消費行動の変化に注目しています。SNS映えを意識した店舗デザインやメニュー開発だけでなく、サステナビリティへの配慮やローカル食材の活用など、価値観の多様化に対応したコンセプト設計の重要性を伝えています。実際に成功している飲食店の事例を紹介しながら、「なぜそのコンセプトが顧客に刺さったのか」を分析していくと、参加者の目の色が変わるのを感じます。
資金繰りと収益改善については、多くの経営者が悩むポイントです。原材料費の高騰や光熱費の上昇といった外部環境の変化にどう対応するか。メニュー価格の見直しだけでなく、オペレーションの効率化や仕入れ先の見直し、廃棄ロスの削減など、具体的な改善策を数字を使って説明します。特に、損益分岐点の考え方や、固定費と変動費のバランスをどう取るかといった基本的な経営指標の見方を、飲食業の文脈で噛み砕いて伝えることを心がけています。
フランチャイズ展開と人材戦略では、単店経営から多店舗展開を目指す際のポイントや、フランチャイズシステムの設計について触れます。また、人手不足が深刻化する中で、どうやって人材を確保し、定着させ、育成していくか。採用時のミスマッチを防ぐ方法や、アルバイトスタッフのモチベーション向上策、店長候補の育成プログラムなど、現場で使える具体的なノウハウを共有しています。
そしてDX対応については、決して難しい技術論に終始しないよう注意しています。予約システムやPOSレジ、モバイルオーダーの導入といった身近なデジタルツールの活用から、顧客データの分析やSNSマーケティングの実践方法まで、「明日から使える」レベルの情報提供を意識しています。
実は、セミナー準備で一番時間をかけているのは事例の選定です。参加者の業態や規模感に近い事例を選ぶことで、「自分の店でもできそう」と感じてもらえるかどうかが決まります。大手チェーンの成功事例ばかりでは、個人経営の小さな飲食店を営む方には刺さりません。逆に、小規模店の工夫を紹介すると、「うちでもすぐに試せる」という反応が返ってきます。
学生向けのセミナーでは、飲食業界の魅力と厳しさの両方を正直に伝えるようにしています。華やかに見える飲食ビジネスの裏側には、早朝からの仕込みや深夜までの営業、休日返上での試作など、地道な努力があります。でも、だからこそお客様の「美味しかった」という一言が心に響く。そういった生の声を届けることで、飲食業への興味を深めてもらいたいと考えています。

2.日本フランチャイズチェーン協会SV学校での商圏分析講義
9月17日、日本フランチャイズチェーン協会が主催する「スーパーバイザー学校」の第5回講義で、商圏分析をテーマに登壇しました。この講義は、フランチャイズビジネスにおけるスーパーバイザー(SV)の育成を目的としたプログラムで、様々な業種からSVや管理職の方々が参加されています。
商圏分析と聞くと、データを眺めて数字を分析する座学のイメージを持たれるかもしれません。でも今回の講義では、実際に街に出て、近隣のコンビニエンスストアを調査するというフィールドワークを中心に構成しました。
なぜコンビニを題材にしたのか。それは、コンビニが商圏分析の教材として非常に優れているからです。同じブランドでも立地や商圏特性によって品揃えや販促活動が異なりますし、わずか数百メートルの距離でも顧客層や売れ筋商品が変わります。つまり、商圏の違いがダイレクトに店舗運営に反映される業態なのです。
講義の流れとしては、まず午前中に商圏分析の基礎理論を学びます。商圏強度や商圏内潜在需要といった概念、RESASやJSTAT MAPなどの統計データの活用方法、SWOT分析の実践的な使い方などを説明しました。ここで大切なのは、データを見るだけで終わらせないこと。データから何を読み取り、どんな仮説を立て、具体的なアクションプランにつなげるかという一連の流れを理解してもらうことです。
午後はグループに分かれてのフィールドワークです。各グループが担当する店舗を決めて、実際に現地調査に出かけます。店舗の立地条件、周辺の人口動態、競合店の状況、導線や店内レイアウト、商品の品揃えや陳列方法、販促活動の内容など、チェックリストに沿って細かく観察します。
そして調査結果をもとに、グループでディスカッションしながらSWOT分析を行い、その店舗への改善提案をまとめます。最後に各グループがプレゼンテーションを行い、私からフィードバックをするという流れです。
この実践的なアプローチが、参加者の皆さんから高い評価をいただきました。アンケート結果を見ると93%の方が満足と回答してくださいました。
理解度も「大変理解できた」が40%、「理解できた」が58%と、ほぼ全員が内容を理解していただけたようです。そして何より嬉しかったのは、「新しい発見はあったか」という質問に対して、参加者全員が「はい」と答えてくれたことです。100%です。
正直なところ、商圏分析というテーマは決して派手なものではありません。地味な作業の積み重ねですし、データと向き合う忍耐力も必要です。だからこそ、実際に足を使って調査する体験を通じて、その重要性と面白さを実感してもらいたかった。全員が「新しい発見があった」と答えてくれたことは、その狙いが伝わった証だと感じています。

3.参加者の声から見えた現場のニーズ
アンケートには、40名の参加者から多くのコメントが寄せられました。その中からいくつかをご紹介します。
「飲食の視点と、物販の視点の共通点と相違点に気付くことが出来、新しい発見があった。自分の見方だけでなく、他人の見え方も必要だと感じた」というコメントがありました。
これは、まさに今回のグループワークの狙いでした。異なる業種のSVが集まることで、自分の業界では当たり前のことが他の業界では新鮮に映ったり、逆に他業種の視点から自社の課題に気づいたりする。そういった学び合いの場を作りたかったのです。
「商圏診断は同業種の方々とも意見交換が出来たので非常に参考になりました。数値分析は時間をかけて読み込みが必要なのと、実際現地に足を運ぶことで発見できることがあると感じました」という声もありました。
これは商圏分析の本質を突いています。データだけ見ていても、本当の姿は見えません。実際に現地に行って、周辺の雰囲気を肌で感じ、店舗を自分の目で観察することで初めて、データの背景にある「なぜ」が見えてくるのです。
「商圏の競合を回ることはありましたが内容が薄く今までのは意味がなかった。しっかりと展開していく上で、今後会社として改善していけるように持ち帰ります」というコメントには、ハッとさせられました。
多くの企業で競合調査は行われていますが、「見て回るだけ」で終わってしまっているケースが少なくありません。大切なのは、調査した情報をどう分析し、どんな戦略に落とし込むか。そして、それを組織全体で共有し、実行に移すこと。今回の講義が、そのきっかけになれば嬉しいです。
「自身の担当店においてエリア分析をざっくりでしかしておらず、細かく分析できていなかったと反省すると共に、大変勉強になりました。エリア分析、SWOT分析を用いて、担当店が何をしなければならないかをオーナー、店長へアクションプランとして伝えることが出来るようにしたいです」というコメントからは、参加者の方の真摯な姿勢が伝わってきます。
SVの役割は、店舗を見守るだけでなく、具体的な改善策を提案し、オーナーや店長の成長を後押しすることです。そのためには、しっかりとした分析に基づいた説得力のある提案が必要になります。
「グループワークで近隣のコンビニを視察しましたが、これだけの近距離でも品ぞろえ、販促活動、利用顧客等に大きな違いがある事に驚きました。店舗の立地や商圏を把握する事で同じブランド、競合との差別化が図られていくことを学ぶことが出来ました」という発見も、まさに商圏分析の醍醐味です。
同じブランドのコンビニでも、駅前店とオフィス街の店、住宅街の店では、来店客の属性も購買行動も全く異なります。それぞれの商圏特性に合わせた店舗運営が求められるのです。
「商圏診断とは提案する事、というのが刺さりました」というシンプルなコメントも印象的でした。
分析して終わりではない。分析結果をもとに、具体的な改善策を提案し、実行に移してもらう。そこまでがSVの仕事であり、商圏診断の目的です。このメッセージが伝わったことが何より嬉しかったです。
他にも、「様々な業種の方と実際に店舗に行きどんな目線、どんなところに注目しているのかグループワークを通じて聞くことが出来た」「自身とは違う視点、考え方、提案等、グループを通して大変勉強になりました」といった、多様な視点の重要性を実感したというコメントが多く寄せられました。
また、「実際に店舗に行ってチェックする事は難しい(全く知らない店を見る事)と感じました」という正直な感想もありました。確かに、自分が日常的に関わっている店舗ではなく、全く知らない店舗を客観的に分析するのは簡単ではありません。でも、だからこそ練習が必要なのです。今回の経験を通じて、商圏分析のスキルを磨くきっかけにしてもらえればと思います。
さらに、「統計データの取り方と活用法の講義がグループワークの中にある事で、データを使った資料にできたのが構成として良かったです」というフィードバックもいただきました。理論と実践をセットで学ぶことで、より深い理解につながったようです。
海外からの参加者もいて、英語でのコメントもいただきました。「ビジネス分野の診断セミナーでは、店舗や競合の分析方法についての理解を深めることができました。人口統計に関する情報に感謝し、遠く離れていてもコンビニエンスストアの顧客がいかに異なるかに驚きました」という内容で、国を越えて商圏分析の重要性が共有できたことを実感しました。
これらのコメントを読み返すと、参加者の皆さんが真剣に取り組み、多くの気づきを得てくださったことがわかります。講師として、これ以上の喜びはありません。

4.これからの講師活動について
10月も引き続き、早稲田大学校友会支援講座や商工会議所でのセミナー登壇が予定されています。それぞれのセミナーで、参加者の皆さんにとって「参加して良かった」と思っていただける内容を提供できるよう、準備を進めています。
講師として大切にしているのは、一方的に知識を伝えるのではなく、参加者同士の学び合いを促進することです。グループワークやディスカッションを通じて、参加者自身が気づきを得て、自分の言葉で語れるようになる。そんな場を作ることが、私の役割だと考えています。
また、常に現場の最新動向にアンテナを張り続けることも意識しています。飲食業界の動きは速く、トレンドもどんどん変化します。去年の成功事例が今年も通用するとは限りません。だからこそ、日々の情報収集と、実際の店舗やクライアントとの対話を通じて、「今」必要とされている情報をキャッチアップし続ける必要があります。
セミナーの準備は正直、大変です。参加者の属性に合わせて内容をカスタマイズし、最新の事例を盛り込み、ワークショップの進行をシミュレーションして…と、一つのセミナーに何十時間もかけることもあります。でも、セミナー後に参加者の方から「すぐに実践してみます」「社内で共有します」という言葉をいただくと、やっぱりやってよかったなと思います。そして、数か月後に「あの時学んだことを実践したら、こんな成果が出ました」という報告をいただくと、講師冥利に尽きます。
企業で研修を企画する人事担当の方、研修会社や支援機関の皆様、もし貴組織で飲食業や商圏分析、フランチャイズビジネスに関するセミナーをご検討されているようでしたら、ぜひお声がけください。参加者の属性や目的に合わせて、柔軟にカスタマイズした研修プログラムをご提案いたします。これまでの講師経験を通じて、多様な業種・規模の企業や組織での研修実績があります。座学だけでなく、フィールドワークやグループディスカッション、ケーススタディなど、参加者が主体的に学べる実践的なプログラムを得意としています。
特に飲食業に関しては、経営者向け、創業希望者向け、学生向けなど、ターゲットに応じた内容設計が可能です。トレンド分析からコンセプト作り、資金繰り、収益改善、フランチャイズ展開、人材戦略、DX対応まで、幅広いテーマに対応できます。
9月・10月の忙しい日々を振り返りながら、改めて講師という仕事の面白さと責任の重さを感じています。研修講師・セミナー講師を通じて、少しでも多くの方々のビジネスの成長に貢献できるよう、これからも研鑽を積んでいきたいと思います。

